古今亭今輔は、お婆さんをやらせたら右に出る者がいない。
知っている人なら誰しも認めるところだろう。
昔、テレビで見た記憶があるが、CDで初めて聞いたのは、いわゆるお婆さん物ではなく、「江島屋」の一節と「囃子長屋」だった。
「江島屋(藤ヶ谷新田 老婆の呪い)」は、イカ物の花嫁衣裳をつかまされて恥をかき命を絶った娘の老母の復讐の話。
明治初年に円朝が、江島屋の番頭だった金兵衛から聞いた話をもとに作った噺とのこと。
「生き霊(りょう)、死霊というものは、確かにある。なきゃぁ、話が引っ立ちません。」、「善人の目に幽霊なし。」と始まる。
間口四間袖蔵付きの立派な門構えの古着屋「江島屋」は、江戸は芝日蔭町にあったとのこと。
老婆が村に来た経緯から始まって江島屋への恨みまでを語る場面は聞かせる。老婆からの伝聞や老婆の行動を金兵衛が江島屋の主人に語る場面も、老婆の怨念が乗り移っているようだ。
「三七、二十一日の願をかけ、今日が満願。あなたに見られては、私の願も破れました。」という老婆の嘆き。
江島屋治(?)衛門の一家けん族を皆殺しにしてやろうと、「おのれ、江島屋~~」と竹の火箸で囲炉裏の灰を突く老婆の迫力。
笑う場面はほとんどないが、息を飲んで聞き入ってしまう。
「囃子長屋」。
本題に入る前の、女房の心構えを説く話が出色だ。
稼いでくる馬の手入れをすると思って夫を立てなさい、という趣旨。
そういう心構えの妻は、現代では天然記念物かもしれない。
祭りのお囃子を口で表現するのは、志ん生もやっているが、今輔のそれは華がある。
新作落語の「ラーメン屋」は、得意のお婆さんが登場する。お爺さんもいい味を出している。
二人とも、働き者の善人だ。
子供が生まれない家庭は不幸だという一節は、今は許されないが、思いやりにあふれた老夫婦を見ていると、あまり気にならない。
屋台のラーメン屋・・・昔なつかしい中華そばなんだろうな。
無銭飲食の男は、おかわりして3杯食べた。
うらやましい。
桂三枝にも、ラーメン屋の話がある。
刑事と元非行少年(更生してラーメン店の店主となる)の交流の話だ。
ラーメンは人情話と相性がいいようだ。
ラーメンのついでに、うどん。
志ん生が「探偵うどん」という話をやっている。
刑事(探偵)と泥棒の攻防の話。
今輔の「ラーメン屋」もそうだが、落語家が得意とする麺をすする場面はない。
というより、「探偵うどん」は、そもそもうどんを食べずに一杯食わされるという話だ。
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2010年8月31日火曜日
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