「てれすこ」という噺がある。三代目金馬のCDで聞いた。
名前のわからない珍魚の名前を知っている者に百両遣わすというお上の懸賞に,その魚は「てれすこ」だと申し出て百両を手にした多度屋茂兵衛,次の同様の懸賞にも「すてれんきょう」だと申し出るが,奉行の計略で,二度目の魚は一度目の魚の干物に過ぎなかった。
お上を偽る不届き者として捕えられた茂兵衛の女房が,夫の放免を願って「ひもの断ち」をするが,茂兵衛には死罪が言い渡される。
死刑執行の前に女房への遺言だけは許されるということで,茂兵衛が女房にした「子どもが大きくなっても,イカの干したのをスルメと言わせるな」という遺言をお奉行が聞き,「言い訳相立った」(生で「てれすこ」,干して「すてれんきょう」,生でイカを干してスルメと言うが如し)として無罪放免となる。
金馬は,「女房がひもの断ちをしたのだから,あたりめぇの話」とサゲる。
愛川晶の「神田紅梅亭寄席物帳 三題噺示現流幽霊」の中で,女房が断った「ひもの」とは,干物ではなく火物(加熱調理をしたもの)だという話が出てくる。自分も「干物断ち」だと思っていて,子に乳をやるため「そば粉を水に溶いたものだけを口にしていた」というのに干物断ちとはどうしてだろう,と不思議に思っていたが,謎が解けた。
火物断ちだが,スルメで助かったのだから干物断ちにも通じる。複雑なサゲだ。
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「てれすこ」どこかで聴いたことがあります。「断ち物」というのがあるそうですね。
返信削除好きなことを断って祈願をする。女房は煮たり焼いたりした食べ物が好きだったのでしょうね。それを断った。火の物断ち。
いかの干したもの、すなわち干物をするめと言わせるな。するめ⇒あたりめというサゲは強烈ですね。高尚です。するというのが縁起が悪いということで、スリッパをアタリッパということを思い出しました。まくらでの噺ですが。